マンションの屋上防水は、面積と工法の単価だけでなく、今の防水層を残せるか、下地・立ち上がり・排水口をどこまで直すかで費用が変わります。管理組合で検討する場合は、長期修繕計画にある予算を出発点に、現状調査と見積もりで必要な工事を確かめます。
例えば東京都八王子・多摩地域の施工会社が示す2026年の目安には、ウレタン防水で税抜5,000〜8,000円/㎡、塩ビシートで税抜5,500〜8,000円/㎡などがあります。ただし、工法の種類が異なり、撤去・下地補修・仮設等まで含む全国共通の総額ではありません。
この記事は、管理組合の理事・修繕委員や建物所有者が、提案を読み、総額と実施範囲を判断するためのガイドです。個々の住戸の所有者が、共用の屋上を独断で工事するための手順ではありません。
屋上防水の見積もり前に、集めておきたい資料
まず管理会社等に、竣工図、防水工事の仕様、過去の修繕履歴、保証書、点検記録、漏水の記録、長期修繕計画を確認します。資料がない部分は不明のまま残し、今回の調査で何を明らかにするかを決めます。
| 確認すること | 工事の判断につながる理由 |
|---|---|
| 既存防水の種類・施工方法 | 重ねられる材料や固定方法が変わる |
| 過去の改修回数と範囲 | 前の防水層や下地の状態を調べる必要がある |
| 漏水した住戸・日時・天候 | 調査箇所や原因の切り分けに役立つ |
| 屋上の使い方 | 歩行、設備点検、物干し等で必要な仕様・動線が変わる |
| 断熱・設備・太陽光等の有無 | 撤去・復旧、固定部、工程の調整が必要になる |
| 工事中の立入・搬入経路 | 安全対策、仮設、揚重、住民への影響を見積もる |
居住者が気付いた水たまり、シートのめくれ、ひび割れ、植物等は調査の手掛かりです。それだけで防水層全体の更新が必要とは決めません。屋上へ自由に立ち入れない建物もあるため、管理者のルールに従い、無理に点検しないでください。
補修・かぶせ・撤去新設を先に分ける
マンションリフォーム推進協議会の防水改修解説では、既存の防水材料・劣化・漏水・改修履歴等を踏まえ、残す工法と撤去する工法を検討する考え方が示されています。
| 改修の範囲 | 何をするか | 比較するポイント |
|---|---|---|
| 部分補修・保護層等の手入れ | 傷んだ箇所や、必要に応じ保護する層を直す | 防水層の機能や漏水原因が残っていないか。全面改修を先送りできる根拠 |
| 既存を残す改修 | 既存層の上へ新たな防水を施工する | 既存層・下地の状態、材料の相性、固定、重量、端部の納まり |
| 撤去して新設 | 既存層等を撤去し、必要な下地処理からやり直す | 撤去・処分、下地の補修量、工期、漏水を防ぐ施工中の対応 |
トップコートの塗り替えと、防水層そのものの更新は同じ工事ではありません。 見積書の名称が「防水塗装」でも、どの層をどこまで直すのか、既存の漏水へどう対応するのかを確認してください。
「前回から○年だから全部交換」「2回重ねたら必ず撤去」と一つの条件だけで決めず、調査結果と採用材料の施工条件から判断します。

図解:概念図。トップコートと防水層更新は別の工事です。改修範囲は既存の状態・材料・履歴等の調査で判断し、個々の住戸の所有者が共用屋上を独断で工事する手順ではありません。 実際の施工例・製品写真ではありません。
工法の選び方:ウレタン・塩ビシート・アスファルト
| 工法 | 提案を読むときの特徴 | 特に聞きたいこと |
|---|---|---|
| ウレタン塗膜防水 | 現場で塗り重ねて防水層をつくる。密着・通気緩衝等の仕様がある | 下地の水分や傷みへどう対応するか。膜厚・工程・端部の施工と検査 |
| 塩ビシート防水 | シートを使い、接着や機械的固定などで施工する | 固定方法、接合部、下地・既存層との相性、端部や設備まわりの納まり |
| アスファルト防水 | 防水材料を重ねて構成し、施工方法・保護仕上げにも種類がある | 既存仕様との関係、重量、熱・臭い等への配慮、撤去・保護層の範囲 |
工法名だけで「寿命が長いから最良」「メンテナンスが要らない」とは決められません。屋上の使い方、既存仕様、点検のしやすさ、施工中の生活への影響まで含めて比べます。
提案の情報がそろっているかを○×△で確認
以下は記入例です。特定の施工会社や工法に点数を付ける表ではありません。
| 確認項目 | A案の記入例 | B案の記入例 | 確認する質問 |
|---|---|---|---|
| 既存防水を残す根拠 | ○ 調査結果付き | △ 説明なし | 浮き・水分・固定条件をどう確認したか |
| 立ち上がり・排水口 | ○ 数量と仕様あり | △ 平場単価のみ | どの箇所まで価格に含むか |
| 設備の脱着・復旧 | × 別途と明記 | △ 未記載 | 必要な設備と担当・金額は何か |
| 工事中の漏水対策 | ○ 工程に記載 | △ 未確認 | 撤去した日の保護、降雨時の対応は何か |
| 完了検査・保証 | ○ 内容あり | △ 年数のみ | 検査記録、対象、除外条件、窓口は何か |
凡例:○=記載を確認、×=含まれないと明記、△=不明・要確認。△を非対応の×と数えず、情報をそろえた後で判断します。
費用の目安:㎡単価と工事総額を分ける
幸成の公開価格表は、2026年・八王子市/多摩地域の目安として、次の税抜単価を示しています。2026年9月21日に確認した掲載内容です。
| 掲載仕様 | 税抜の参考単価 |
|---|---|
| ウレタン・密着 | 5,000〜7,000円/㎡ |
| ウレタン・通気緩衝 | 6,000〜8,000円/㎡ |
| 塩ビシート・接着 | 5,500〜7,500円/㎡ |
| 塩ビシート・機械的固定 | 6,000〜8,000円/㎡ |
| アスファルト・熱工法 | 8,000〜12,000円/㎡ |
これは一社の地域別目安で、全国平均や当サイトの見積価格ではありません。表だけでは、すべての下地補修、撤去、仮設、排水口等が含まれるとは確認できないため、その単価を掛けただけで契約総額としないでください。
100㎡の計算例
上の通気緩衝仕様の単価を、仮に平場100㎡へ掛けると、60万〜80万円税抜、消費税10%で66万〜88万円税込です。これは編集部による単価計算の例です。実際の見積もりでもこの金額だけで終わる、という意味ではありません。
そこへ何が加わるのか、次のように確認します。
| 別に確認する費目 | 数量・条件の例 |
|---|---|
| 既存防水・保護層の撤去と処分 | 撤去する範囲、層、処分量 |
| 下地補修・水分への対応 | 浮き、ひび割れ、傷み、必要な処理 |
| 立ち上がり・端部 | 壁際の高さ・長さ、笠木等との接合 |
| 排水口・勾配調整 | ドレンの個数、交換・改修、排水経路 |
| 仮設・揚重・安全対策 | 足場、昇降、落下防止、材料搬入 |
| 設備の脱着・復旧 | 架台、配管、手すり、その他の設備 |
| 設計・工事監理等 | 調査、仕様作成、検査、記録等の委託範囲 |
平場の㎡、立ち上がりのmや㎡、排水口の個数を分ければ、面積だけでは説明できなかった価格差が見えやすくなります。各費目がすでに単価に含まれている場合は、二重計上しないよう確認します。

図解:概念図。費目のまとまりを示す図です。平場単価だけで契約総額とはできず、既に単価へ含まれる項目は二重計上しません。 実際の施工例・製品写真ではありません。
長期修繕計画の予定年は「必ず全面更新する年」ではない
国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインは、計画上の修繕時期や費用を概略とし、実施時には劣化状況等の調査・診断を踏まえて判断する考え方を示しています。
前回からの年数は重要な情報ですが、それだけで工法は決まりません。保護層の手入れ、部分補修、防水の更新、撤去新設を同じ「12〜15年ごとの工事」として扱わず、既存仕様と調査結果に合わせて今回の範囲を定めます。
予定を延ばす案が出た場合は、「今は大丈夫」という口頭説明だけでなく、傷みの状態、漏水の有無、次の点検時期、状態が変わったときの対応を記録してください。予定より早く工事する場合も、早める理由と資金計画を説明できるようにします。
管理組合で進める手順
集めて診断
工事と費用を比較
必要な決議を確認
施工・検査・保存
図は編集部による計画工事の整理です。漏水等の緊急対応では、通常の計画工事と違う手配が必要なことがあります。具体的な権限と手続きは、自分のマンションの管理規約・契約等に沿って確認します。
修繕積立金を使う前に確認すること
国土交通省のマンション標準管理規約では、計画的な修繕などが修繕積立金の使途として扱われています。ただし、標準管理規約はモデルであり、各マンションの規約を自動的に変更するものではありません。
管理組合では、工事の性質、予算、積立残高、長期修繕計画への影響、必要な手続きを確認します。「積立金があるから理事長だけで自由に契約できる」とも、「どの工事でも同じ決議要件」とも考えません。必要に応じ、管理会社や専門家へ資料を示して相談してください。
住民説明では、価格以外の影響も知らせる
臭い、音、作業時間、洗濯物・窓開け、搬入経路、エレベーター利用、屋上立入、天候による延期を工程と一緒に説明します。工事中に漏水が起きた場合の連絡先も共有してください。
完成時には、契約した仕様との一致、検査記録、施工写真、保証書、点検・清掃方法を確認し、次回の理事会へ引き継げる場所へ保存します。
保険や補助制度を、工事費の確定財源にしない
経年劣化した防水層の更新費と、漏水によって室内等へ生じた損害の費用は分けて扱います。何が保険の対象になるかは、原因、契約、補償の種類や免責等により異なります。施工会社の説明だけで決めず、修理前の写真・調査資料とともに保険会社へ確認してください。日本損害保険協会の自然災害と保険の案内も確認先になります。
自治体等の支援を検討する場合も、制度の有無、管理組合が申請できるか、対象工事、受付時期、手続きと交付条件を公式案内で確認します。本記事では個別の保険金・補助金を算定していません。受給が確定していない金額を積立金の不足分として計上しないようにします。
マンション屋上防水のよくある質問
100㎡なら100万円以内でできますか?
面積だけでは判断できません。上の単価計算では平場100㎡の通気緩衝仕様が66万〜88万円税込ですが、撤去・補修・端部・排水口・仮設等の条件が未確定です。必要な項目を含む総額で比較してください。
防水の上から塗れば安く済みますか?
保護する層の塗り替えと、防水層の更新では役割が違います。既存の浮きや水分、漏水原因を残したまま表面だけ直してよいかは調査が必要です。どの層を直す提案なのかを断面や仕様書で説明してもらいましょう。
雨漏りがなければ、まだ工事は要りませんか?
漏水がないことだけで判断せず、既存防水の状態、前回工事、端部や排水の点検結果を合わせて判断します。延期する場合は、次の点検時期と、どの変化があれば再検討するかを決めます。
保証10年なら、その間の点検は不要ですか?
保証年数と、維持管理の必要性は別です。対象範囲、除外条件、点検・清掃の条件、漏水時の調査費や連絡先を確認してください。材料、施工、第三者の保証を同じものとして比べないようにします。
工期は何日くらいですか?
面積、工法、撤去・補修量、設備の移動、乾燥や天候で変わります。作業予定だけでなく、屋上を使えない期間、予備日、降雨時に保護する方法まで示してもらうと、住民の予定と調整しやすくなります。






