築20年は、家の状態とこれからの暮らしをまとめて見直すよい機会です。ただし、20年たったから水回り・屋根・外壁をすべて交換する、という決まりはありません。 使っている材料、過去の手入れ、不具合、家族構成によって、必要な工事は変わります。
まずは「被害を広げないために対応すること」「今の不便を直すこと」「今後に備えて計画すること」を分けましょう。設備の見た目だけで決めず、今回残す部分の状態まで確かめると、工事のやり直しと予算超過を避けやすくなります。
この記事では、築20年の戸建て・マンションで点検したい箇所、工事の優先順位、費用を比較する方法、住みながら進める場合の注意点を整理します。
最初に「築年」より、症状と修繕履歴を集める
同じ築20年でも、数年前に屋根や給湯器を更新した家と、新築時のまま使っている家では、次に必要な工事が違います。建物全体の築年と、それぞれの設備・材料を使い始めた年を分けて記録してください。
| 用意する情報 | 書き方の例 |
|---|---|
| 現在の不具合 | 雨の後に天井にシミが出る。浴室の入口付近が湿る |
| 不便・不満 | 冬の窓際が寒い。洗面所の収納が足りない |
| 過去の工事 | 屋根補修を何年に、どの範囲で行ったか |
| 設備の情報 | 給湯器・キッチン等の型番、設置年、修理歴 |
| これからの暮らし | 住む人数、使わなくなる部屋、階段の負担 |
| 予算と時期 | 今回使える総額、残しておく生活資金、希望時期 |
図面、点検報告書、工事の請求書、保証書があれば一緒に用意します。記録がなくても、分からない箇所は「不明」として相談できます。年数だけで故障や劣化を断定しないことが大切です。

図解:概念図。築年、設備等の使用開始年、現在の状態を区別する図です。耐用年数表や年齢による交換指示ではありません。 実際の施工例・製品写真ではありません。
工事の優先順位は、3段階に分ける
先に調べる:安全や被害の拡大に関わる症状
雨漏り、漏水、床の沈み、外装材の落下のおそれ、設備の異常などがあれば、模様替えより先に専門業者へ確認を依頼します。まず原因と範囲を調べ、応急対応と本修理を分けましょう。施主が屋根や不安定な高所へ登って点検する必要はありません。
今回まとめるか検討:日常の不便と、工事が重なる部分
キッチン交換時に床を開けるなら、周辺の配管や下地も確認する機会になります。外装で足場を設けるなら、同じ足場を使って点検・工事する必要がある部位を相談できます。ただし、一緒に施工できるからという理由だけで、問題のない設備まで交換する必要はありません。
計画しておく:将来の使い方や更新
今は使用できる設備、後で使い方を決めたい部屋などは、次の点検時期や更新を考える条件を記録して残します。「何年後に必ず交換」ではなく、「故障や状態の変化があれば再検討」「次の内装工事で同時に検討」など、判断のきっかけも決めておくと実用的です。
修繕履歴を集める
必要な範囲を決める
将来に分ける
生活への影響を比べる
図は年数による交換表ではなく、工事範囲を決める順序です。症状がある場合は、その緊急性に応じて先に対応します。
築20年で確認したい10項目
次の表は、すべて工事を勧める一覧ではありません。自宅の状態を確認するためのチェック表です。アップルホームの築20年の点検解説や小田急ハウジングの解説でも、症状・維持管理の状況を確認して優先度を決めることが論点になっています。
| 部位・テーマ | 確認したい状態 | 工事を考えるときのポイント |
|---|---|---|
| 1.屋根 | 雨漏り、ずれ・破損、過去の補修 | 屋根材だけでなく下地等を調べ、塗装・修理・全面改修を区別 |
| 2.外壁・シーリング | ひび、はがれ、目地の傷み、雨水の侵入 | 見た目と防水上の問題を分け、必要な補修を確認 |
| 3.ベランダ・バルコニー | 水たまり、排水、表面と防水層の状態 | 表面の保護塗装と防水層の改修を区別 |
| 4.給排水管 | 漏れ、流れ、過去の更新、点検できる範囲 | 材料・症状・工事機会から交換範囲を判断 |
| 5.給湯・暖冷房 | エラー、異音、能力不足、修理歴 | 修理の可否と交換時の設置条件を比較 |
| 6.キッチン | 機器の故障、収納、動線、周辺の傷み | 機器だけで足りるか、本体・内装まで直すか |
| 7.浴室・洗面・トイレ | 漏水、清掃の負担、段差、使い勝手 | 下地や配管を含む範囲と、使えない日数を確認 |
| 8.窓・断熱・換気 | 寒さ、暑さ、結露、換気の状況 | 原因と改善したい部屋を整理し、施工方法を比較 |
| 9.床下・構造 | 湿気、腐朽、蟻害等の兆候、過去の改修 | 必要な調査を行い、補修・補強を年数だけで決めない |
| 10.間取り・内装 | 部屋の使い方、収納、床の傷み | 再利用できる部分と変更したい部分を分ける |
築年数が増えたことだけで、断熱材の性能が必ず低下した、現在の耐震基準に適合しなくなった、と判断することはできません。施工された仕様、建物の状態、改修履歴などを確認し、不安があれば必要な診断を相談してください。
費用は、築20年の一括相場より工事範囲で比べる
水回りだけを交換する工事と、間取りや外装まで変える工事では、費用の前提が異なります。築20年だから500万円、全面なら1,500万円、という区切りだけで契約予算を決めないでください。
公式施工例を読むときの見方
ニッカホーム船橋の公開施工例には、キッチン・浴室・洗面の改修で410万円(税込)、工期1週間と記載された例があります。キッチンはTOTOザ・クラッソ、浴室はLIXILリデアMタイプ等の仕様です。
これは船橋市の特定の工事例で、家全体の改修ではありません。掲載情報から工事面積・建物の築年・施工時点を確定できないため、築20年住宅の平均額や2026年の標準価格としては扱いません。自宅に当てはめるときは、設備仕様と内装・配管・下地を含む範囲をそろえて見積もりを取ります。
一方、BXゆとりフォームの築20年の集合住宅の事例では、水回りに加え、玄関・廊下、部屋や建具など広い範囲を改修しています。同じページの写真でも、表示費用に含まれない工事があると注記されています。事例写真に写っているものが、すべてその金額に含まれるとは限らない点にも注意しましょう。
見積もりは「最低限の案」と「今回まとめる案」を分ける
| 比較項目 | 最低限の案 | 今回まとめる案 |
|---|---|---|
| 不具合への対応 | 必要な原因調査・補修を含める | 同じ必要工事を含める |
| 設備・内装 | 使えるものは残す | 更新する部位と仕様を追加 |
| 工事の重なり | 将来、再度必要になる撤去・養生等を確認 | 同時施工で省ける作業があるか確認 |
| 生活への影響 | 工事回数は増える可能性がある | 一度の工事が長くなる可能性がある |
| 総費用 | 現時点の必要費用+将来の見通し | 今回の税込総額+残る将来費用 |
同時工事なら必ず割安になるとは限りません。追加される工事そのものの費用と、減る仮設・養生等の費用を分けて説明してもらいましょう。

図解:概念図。本文の2案比較を整理。一緒に施工できるだけで問題のない設備まで交換せず、必要な補修を両案でそろえます。 実際の施工例・製品写真ではありません。
予算500万円を使う場合の整理例
以下は編集部による配分の記入例で、相場や実例ではありません。税がかかる費目は税込の支払額でそろえる想定です。
- 必要な工事と希望する更新:見積もりを基に420万円と記入
- 解体後に判断する追加工事等への予備枠:50万円
- 工事中の生活費・荷物移動等:30万円
- 合計:420+50+30=500万円
予備枠50万円は、どの家でも十分という意味ではありません。未確認部分が多いなら、先に調査を追加する、設備仕様を見直す、今回の工事を絞るなどの調整が必要です。生活資金まで工事に使い切らない予算にしてください。
戸建てとマンションで分けて確認すること
戸建て:室内と外装、構造を一緒に整理
室内の改修だけを先に決めず、屋根・外壁や床下など、家を守る部分の状態も確認します。構造上必要な壁を動かす、広い範囲を解体するなどの計画では、建築士等に安全性と手続きの要否を相談します。
国土交通省の資料では、2025年4月以降、2階建ての木造戸建て等で行う大規模な修繕・模様替えが建築確認手続きの対象となることが示されています。設備交換だけの場合と同じ扱いではないため、今回の具体的な範囲で確認してください。
マンション:住戸内と建物全体の更新は別
室内設備と、屋上・外壁・共用管等の修繕は同じ計画ではありません。管理規約、長期修繕計画、共用部分の工事予定を確認し、住戸の工事と調整します。
窓や玄関扉などは、住戸で使うものでも自由に交換できるとは限りません。工事申請、床材の条件、作業時間、搬入・養生も含め、自分のマンションの規約と細則を確認してください。標準モデルは国土交通省のマンション標準管理規約で確認できます。
住みながら工事するなら、使えない設備と部屋を確認
「住みながら可能」と聞いたときは、どの部屋で過ごせるかだけでなく、食事・入浴・洗濯・トイレを使える時間も聞きましょう。家族の人数や在宅勤務、ペットの居場所によって負担が変わります。
| 工程表に入れてもらうこと | 確認する理由 |
|---|---|
| 水回りごとの使用停止期間 | 入浴・調理・洗濯の代替手段を用意する |
| 粉じん・音が大きい日 | 在宅・外出・荷物の保護を調整する |
| 工事中に通れない場所 | 安全な生活動線を確保する |
| 解体後の確認日 | 追加工事を施主が判断する時間を取る |
| 完成検査と手直し | 工事終了と普段どおり使える日をそろえる |
使う部屋を移しながら施工できる場合もありますが、全面解体や複数の水回りを同時に止める工事では、仮住まいが適することもあります。工事費と仮住まい費用を合算して比較してください。
よくある質問
築20年なら、水回りを全部交換すべきですか?
不具合、使い勝手、修理できるか、過去の交換履歴で判断します。一部の機器や部品の交換で解決する場合と、下地・配管を含む更新が必要な場合を分けて見積もりを取りましょう。
屋根や外壁は、見た目がきれいなら点検しなくてよいですか?
見た目だけでは、防水上の状態や隠れた部分は分かりません。症状や修繕履歴に応じて点検を相談します。外壁の見積もりでは、足場・補修・塗装などを分けて読む方法を外壁塗装の見積もり解説でも確認できます。
築20年で建て替えるべきか迷います。
築年だけでは決められません。残す建物の状態、今後住みたい期間、希望する広さ・間取り・性能、総費用を比較します。構造等に大きな課題があれば調査を先に行い、改修と建て替えの両案を検討してください。
補助金で工事費が40%下がることはありますか?
築20年の改修全体が一律40%安くなる制度としては扱えません。利用候補の制度ごとに、対象住宅・工事・設備・申請者・手続き等を確認する必要があります。受給が決まっていない金額を予算から引かず、契約前に公式要項と申請の時期を確かめましょう。
最初に、どの会社へ何を頼めばよいですか?
希望する工事と住宅の種類に対応する会社へ、点検と範囲別の見積もりを相談します。不具合の写真と修繕履歴を渡し、「必要な補修」「希望する改善」「今回は残すもの」を分けてもらうと比較しやすくなります。リフォーム会社の選び方も参考にしてください。



