蓄電池は停電への備えになりますが、容量が大きいだけで家中の家電を長時間使えるとは限りません。 ためられる量、同時に出せる電力、給電する回路、100V・200Vの対応を分けて選ぶ必要があります。
この記事では、冷蔵庫・照明・通信機器を優先したい家庭と、エアコンやIHなども使いたい家庭の違いを整理します。実際の蓄電池の写真、停電時の仮計算、見積もりと引渡しの確認表で、自宅に必要な備えを具体化しましょう。
停電対策では容量・出力・回路の三つを見る

図の三つは別々の確認項目です。容量は主に何時間使えるか、出力は何を同時に動かせるか、回路はどの場所へ電気を届けられるかに関わります。
| 確認項目 | 意味 | 見積もりで聞くこと |
|---|---|---|
| 蓄電容量・kWh | ためる電気の量 | 公称容量と実際に使える量はどう違うか |
| 自立運転時の出力・kW/kVA | 停電時に供給できる大きさ | 同時使用と起動時の負荷を満たせるか |
| 給電回路 | 電気を届ける範囲 | 冷蔵庫、居室、通信機器の回路が含まれるか |
| 100V・200V対応 | 家電に必要な電圧への対応 | 使用予定のエアコンやIHの型番で使えるか |
| 停電時の充電 | 太陽光などから充電できる条件 | 対応機器、運転モード、残量ゼロからの復帰条件 |
kVAとkWは常に同じ数字として使えるわけではありません。機器仕様と家電の入力条件を施工会社に照合してもらい、広告の最大値だけで同時使用を決めないでください。
何時間使えるかは、停電時の残量から計算する
例えば、家電へ供給できる電力量が5kWh残っていると仮定すると、平均200Wの負荷なら5÷0.2=25時間、平均500Wなら5÷0.5=10時間です。この5kWhは購入時の公称容量ではなく、保護のために残す量や変換損失を考慮した後、家電側で使える量として置いた仮例です。
| 仮の使用方法 | 平均の消費電力 | 5kWhを使える場合の単純計算 |
|---|---|---|
| 必要な小電力家電に絞る | 200W | 約25時間 |
| 使用家電を増やす | 500W | 約10時間 |
| 大きな負荷を続ける | 1,000W | 約5時間 |
これは代表的な家庭の使用時間ではありません。冷蔵庫やエアコンは運転状態で消費電力が変わり、室温・外気温・設定・開閉回数にも左右されます。機器の待機電力や劣化、気温の影響もあるため、実際に何時間使えるかは余裕を持って見積もります。
容量が10kWhでも、停電時に10kWh残っているとは限らない
普段の電気代削減に使っていれば、停電が起きる時刻によって残量は変わります。災害用に一定量を残す設定を高くすると備えは増えますが、日常の節約へ使える量は減ります。同じ電力を、節約用と停電用の両方に使える前提にしないことが大切です。
家族で、最低限どの部屋を守るか、何時間の備えを希望するかを先に決めましょう。必要量を明らかにすると、大きい容量を勧められた場合にも理由を確認できます。
全負荷型と特定負荷型、どちらを選ぶか
全負荷型は家全体へ給電する構成、特定負荷型は指定した回路へ給電する構成です。ただし、全負荷型という名称は、全家電の同時使用を保証する意味ではありません。
| 比較項目 | 特定負荷型 | 全負荷型 |
|---|---|---|
| あらかじめ選んだ回路への給電 | ○ | ○ |
| 家全体の回路への給電 | × | ○:設備構成による |
| 停電時の200V家電 | △:対応機種・構成を確認 | △:対応機種・出力を確認 |
| 使う電気を絞りやすい | ○:対象回路を先に選ぶ | △:不要家電を自分で停止する場合がある |
| どの家電も無制限に同時使用 | × | × |
○は対応する構成、×はその方式では対応しない内容、△は製品・接続条件で変わります。冷蔵庫と照明、通信機器を中心にしたいなら、特定負荷型でも目的を満たす可能性があります。離れた複数の部屋や200V家電も守りたいなら、全負荷型を候補にし、出力と実際の接続条件を確認します。
オール電化でも、必要家電から逆算する
IH、エコキュート、エアコンを全部同時に動かすと、出力の上限に達したり残量を早く使い切ったりします。停電中は給湯の沸き上げを止め、調理と暖冷房の時間をずらすなど、優先順位を設計することも必要です。
200V対応の表記だけで判断せず、自宅の家電型番を施工会社へ伝えてください。通常運転だけでなく、起動時や高出力モード、エコキュートのメーカー側の接続条件まで確認します。
実際の商品で確認する、蓄電池とシステム構成

写真出典:オムロン・KPBP-Aシリーズのシステム構成。屋内外設置に対応する蓄電池ユニットの掲載例です。各型番の施工条件と対応機器は、現行の仕様書で確認してください。
同シリーズは単機能、ハイブリッド、全負荷対応型ハイブリッドの構成を掲載しています。オムロンの特長説明では、全負荷対応構成でも停電時の出力は4kVAであり、発電状況や使用負荷で制限があると注記されています。容量の選択と、給電する構成の選択は別です。

写真出典:オムロン・KPBP-Aシリーズ。現行ページに掲載された別形状の蓄電池例です。上の写真と同じ容量でも同一型番とは限らず、価格・寸法・設置条件を混ぜて比較しないでください。
見積書には、蓄電池の型番だけでなく、パワコン、分電盤、切替・制御に必要な機器の型番も記載してもらいます。屋内か屋外かを選ぶ際は、本体を置ける面積に加えて、点検空間、搬入、固定、温度・浸水・塩害条件を確認します。
同じメーカーでも、容量と停電時の構成を別々に選ぶ
上の写真には形の異なる蓄電池が載っています。下表では混同を避け、オムロンのC型3品番を同じ基準で比較します。数値は2026年9月25日に確認した公式仕様です。
| 蓄電池の型番 | 公称/実効容量 | 本体寸法・質量 |
|---|---|---|
| KP-BU65C-A | 6.5/5.8kWh | 幅450×高さ719×奥行137mm・約65kg。床置き時 |
| KP-BU97C-A | 9.7/8.7kWh | 幅450×高さ628×奥行275mm・約104kg |
| KP-BU130C-A | 13.0/11.6kWh | 幅450×高さ749×奥行275mm・約127kg |
3品番とも屋内・屋外の設置に対応します。屋外は海岸・汽水域から500m超、使用温度−15〜45℃などの条件があり、温度によって充放電が制限されます。6.5kWh品を自立設置する場合は別の固定ユニットが必要で、高さは749mmになります。写真の箱の大きさだけで置き場を決めないでください。
多くためられることと、停電中に多くの家電を同時に使えることは別です。 共通するパワコンKPBP-A-2でも、次の構成で停電時の使い方が変わります。
| 構成 | 停電時の対象と定格出力 | 選びやすい目的 |
|---|---|---|
| 単機能・特定負荷 | 100Vの指定回路、2.0kVA | 既存の太陽光パワコンを残し、冷蔵庫・照明・通信などへ給電を絞る |
| ハイブリッド・特定負荷 | 100Vの指定回路、2.0kVA | 太陽光もまとめて制御し、非常時の回路を限定 |
| ハイブリッド・全負荷 | トランスユニット接続で100V・200V、4.0kVA | エアコンやIHも候補に入れ、同時使用を調整する |
通常の連系運転では、単機能構成で6.5kWh品が2.5kW、9.7kWh品が4.0kW、13.0kWh品が5.0kW。ハイブリッドのパワコン定格は5.6kW(力率0.95)です。この通常時の数値を停電時出力として使わないでください。 全負荷構成でも電源側の条件に制限され、6.5kWh品の蓄電池側最大充放電電力は2.5kWです。夜間に太陽光が発電していない状況で、必ず4.0kVAを出せるという意味ではありません。
例えば停電中に冷蔵庫・照明を守るのが主目的なら、特定負荷の配線先と残す容量を先に決めます。200Vエアコンも守るなら、全負荷構成を選んだうえで、IHや電子レンジなどを同時に使わない運用まで確認します。小容量を選んで出力を補う、あるいは大容量を選べば配線条件も解決する、といった判断はできません。
保証は3品番とも15年、所定条件で15年後の初期容量60%以上とされています。容量保証は停電中の家電動作時間の保証ではありません。契約時に対象機器と保証申請を、引渡し時に実際の切替・給電回路・残量設定を確かめると、仕様の数字を自宅の備えへつなげられます。
太陽光があれば停電中も充電できるか
対応する太陽光と蓄電システムの組み合わせなら、日中の発電を使いながら余剰分を充電できる場合があります。ただし、雨や曇り、積雪、影で発電量は減り、夜間は太陽光から充電できません。毎日満充電へ戻る前提で長期停電への備えを計算しないでください。
既存の太陽光へ蓄電池を後付けする場合は、停電時の連携が可能かを型番と配線構成で確認します。通常時に連携することと、停電中にも自動で充電することは同じではありません。
また、太陽光だけに自立運転機能があっても、専用コンセントの利用や切替操作が必要な製品があります。容量や接続できる機器にも制限があります。取扱説明書を保管し、平常時に施工会社と操作を確認しておきましょう。
購入から引渡しまで、確認はこの順で

図の順に、使いたい物を決め、設備で実現できるか確かめ、最後に家族が使える状態にします。単にカタログを受け取るだけでなく、停電時の操作と復電時の扱いを自宅で説明してもらってください。
見積もり段階の確認表
| 確認項目 | 回答が不十分な場合に追加で聞くこと |
|---|---|
| 優先家電と使用時間 | どの部屋のどの家電を、何W・何時間で計算したか |
| 出力と電圧 | 停電時の仕様か、通常時の最大値を使っていないか |
| 給電回路 | 自宅の分電盤図で対象を示せるか |
| 既存太陽光 | 停電時の充電と再起動まで対応する組み合わせか |
| 自動切替 | 停電検知から給電までの停止時間、手動操作の有無 |
| 残量設定 | 節約と停電備えのどちらを優先し、設定変更できるか |
| 工事・保証 | 機器、施工、容量保証の範囲と保証登録の担当者 |
引渡し時に家族と確認すること
運転モードの変更、残量表示、異常表示、連絡先を確認します。停電時に使えない回路がある場合は、家族が分かるように一覧にしましょう。機器の起動や切替方法は製品ごとに違うため、他機種の動画をそのまま自宅へ当てはめないでください。
自動切替でも瞬断が起きる場合があります。無停電が必要な機器は、蓄電池の仕様だけで十分か、別途UPS等が必要かを機器メーカーに確認します。
費用は本体価格と工事総額を分ける
価格を見るときは、蓄電池、パワコン、分電盤や切替機器、基礎、配線、既存機器の撤去、設定・申請を分けます。希望する回路数や配線距離、既存設備によって工事費が変わります。
例えばニチコンの製品一覧では、7.4kWh屋内用蓄電池ユニットES-BSMが税抜190万円、パワコンES-T5が税抜150万円と掲載されています。これは特定製品の部品別メーカー希望小売価格で、上で紹介したオムロン製品の価格でも、工事込みの実売相場でもありません。容量が同じだけの価格比較を避け、停電時の給電条件と必要な構成品をそろえた総額を取り寄せるための参考です。
2026年度はみらいエコ住宅2026事業で蓄電池が補助対象となっており、要件を満たす場合に96,000円/戸を申請できます。あわせて、お住まいの自治体独自の制度を利用できる場合もあります。申請には必要書類の準備と、専門業者の協力が必要です。制度ごと・自治体ごとに条件が異なるため、公式サイトや自治体窓口で事前に確認しましょう。
蓄電池の設置だけでは申請できず、住宅の新築時期などに応じた所定の要件化工事が必要です。 申請手続きは登録事業者が行います。みらいエコ住宅2026事業の対象住宅・工事・申請者の条件
補助金は補助金診断から候補を探し、制度の公式案内で対象型番、申請と契約・着工の順序、受付状況を確認します。採択前の補助金を必ずもらえる金額として差し引かず、補助金なしでも支払える計画にします。
蓄電池と一緒に準備したいもの
電気を確保しても、水・食料・通信回線まで復旧するわけではありません。冷蔵庫を使えても長期間の保存を保証できないため、常温保存できる備蓄も必要です。携帯電話の充電ができても通信事業者側が停止している場合があるので、ラジオや連絡方法も考えます。
設備が浸水・破損した場合の扱いはメーカー案内に従います。異常がある機器を自分で開けたり、接続を変更したりせず、避難や安全確保を優先します。蓄電池を備えたことを、自宅にとどまる判断の代わりにはしないでください。
よくある質問
蓄電池だけでも使えますか?
太陽光なしで電力会社の電気を充電できる構成はあります。ただし、停電中に太陽光などの充電源がなければ、残量を使い切った後は供給できません。自宅へ設置する機種の運転条件を確認します。
エアコンは使えますか?
家電の電圧、給電回路、必要出力、起動時の負荷が合えば使える場合があります。200V対応だけでなく、自宅のエアコン型番と同時に動かす家電を含めて確認します。強い冷暖房運転を続ければ使用時間は短くなります。
家族4人なら何kWhが必要ですか?
人数だけでは決まりません。必要家電、使用時間、停電開始時の残量、日中の充電条件を先に決めます。冷蔵庫・照明・通信機器中心か、暖冷房や調理も含むかで必要量と出力が変わります。
マンションでも導入できますか?
専有部・共用部、管理規約、設置荷重、配線や避難経路等の確認が必要です。戸建て用の設置案をそのまま使わず、管理組合等と施工会社へ事前に相談します。屋内置き型やポータブル電源も、使える機器と設置・保管条件が異なります。
寿命までずっと同じ容量で使えますか?
蓄電池は使用と経年で容量が変化します。年数だけでなく、容量保証の条件、測定基準、免責、保証終了後の点検・交換費用を確認します。公称容量を長期間固定した停電シミュレーションには余裕が必要です。
出典
確認日:2026年9月25日。使用時間の例は計算方法を示す仮例で、停電時の動作や供給時間を保証するものではありません。








