屋根リフォームの費用は、屋根を塗るのか、重ねるのか、撤去して直すのかで大きく変わります。ただし、安い工法から選べばよいわけではありません。雨漏りの原因や下地の傷みを確認し、その屋根に使える工法を絞ってから予算を比べます。
施工会社の公開例には、屋根60㎡の塗装と棟板金交換で63.1万円、65㎡のカバー工法で106.3万円、78㎡の瓦から金属屋根への葺き替えで178.2万円という税込総額があります。面積・形状・補修内容が異なる個別の例で、全国一律の相場や同じ家での3案比較ではありません。この記事では、こうした数字を自宅の見積もりへ置き換えるときに必要な条件を説明します。
最初に確認するのは、築年数より「どこが傷んでいるか」
屋根は、表面の屋根材だけで雨を防いでいるわけではありません。屋根材の下には防水紙や、それを支える野地板などがあります。表面の色あせと、内部まで進んだ漏水では必要な工事が違います。
| 気になる状態 | 調査で確かめたいこと | 調査前に決めないこと |
|---|---|---|
| 色あせ、表面の汚れ、塗膜の傷み | 既存屋根材に再塗装できるか。割れや下地の問題がないか | 色あせだけを理由に全面葺き替えを決める |
| 板金の浮き、屋根材のずれ・破損 | 傷んだ範囲と固定部分の状態。部分補修で対応できるか | 破損箇所だけ見て、屋根全体が寿命だと決める |
| 天井の雨染み、雨のときの漏水 | 屋根・外壁・取り合いなどの浸入口と水の通り道 | 屋根塗装をすれば雨漏りも止まると考える |
| 過去にも補修したのに再発する | 前回の修理内容、防水紙・下地の状態、別の浸入口 | 同じ場所を再び塞ぐだけで済ませる |
見える症状と、必要な工法は一対一ではありません。 自分で屋根へ上がらず、調査写真と説明で確認しましょう。点検を依頼するときは、調査費、写真・報告書の有無、工事を依頼しなかった場合の費用も先に聞いてください。
屋根工事を選ぶ順番
伝える
下地を調べる
工事範囲を絞る
税込総額を比べる
図は編集部が整理した検討手順です。屋根の構造図や、ご自宅の診断結果を示すものではありません。見えない部分が残る場合は、追加調査や、工事中に確認する手順まで見積もりに書いてもらいます。

図解:概念図。本文の一般的な構成を概念的に示しています。実際の屋根の断面・寸法・診断結果や施工方法を示す図ではありません。 実際の施工例・製品写真ではありません。
塗装・カバー工法・葺き替えは、何が違う?
| 比較項目 | 塗装 | カバー工法 | 葺き替え |
|---|---|---|---|
| 主な工事 | 既存材を補修・清掃して塗り直す | 既存屋根を残し、新しい屋根を重ねる | 既存屋根を撤去して新しい屋根へ替える |
| 既存屋根材を大部分残す | ○ | ○ | × |
| 屋根材の下を広く確認しながら工事する | × | △ 部分的な確認になる | ○ 撤去後に確認する |
| 防水紙を新しくする工事を含む | × | ○ 新しい屋根の防水紙を施工 | ○ 更新する仕様を確認 |
| 傷んだ野地板まで直す | × 別工事 | △ 傷みの範囲によって不向き | ○ 必要な補修を別途計上 |
| どの既存屋根にも選べる | × | × | △ 構造・新しい材料等を確認 |
凡例:○=一般的な工法の内容に含められる、×=その工法だけでは対応しない、△=条件による。○が多いほど良い、という採点表ではありません。塗装前の部分補修、カバー前の板金撤去、葺き替え時の下地補修など、実際の仕様は建物ごとに決まります。
塗装が候補になるとき
既存の屋根材が再塗装に適し、屋根材や下地の状態を確認したうえで、表面を保護し直す場合です。屋根材によっては再塗装に向かないものもあるため、「スレートだから塗れる」と材質名だけで判断しないでください。
屋根塗装は、傷んだ防水紙や野地板を取り替える工事ではありません。漏水がある場合は、雨漏りの原因修理と、表面の塗り替えを分けて説明してもらうことが大切です。
カバー工法が候補になるとき
既存の屋根を残せる状態で、新しい屋根を固定する条件が整う場合に検討します。撤去量を抑えられる一方、重ねる分の重量、既存の傷み、軒先や雨どいとの納まり、将来の改修方法を確認する必要があります。
「撤去しないから下地調査も不要」という意味ではありません。既存材の種類、過去のカバー工事の有無、固定する下地の状態を調べ、向かない理由があれば葺き替えと比較します。
葺き替えが候補になるとき
既存材を撤去して下地を確認・補修したいときや、カバーに適さない屋根を変更するときに検討します。撤去・運搬・処分が増え、下地補修の範囲でも総額が変わります。全体を直す前に、部分修理で足りる可能性があるかも聞いてください。

図解:概念図。一般的な工法の違いです。全屋根に適用できる表ではなく、既存材・下地・構造等の調査が前提。別条件の施工例の差額を追加料金にしません。 実際の施工例・製品写真ではありません。
費用の具体例:面積と工事内容をセットで読む
以下はテイガクの公開施工例に記載された金額です。2026年9月21日に確認された掲載内容で、各工事の施工年月は確認できていません。「2026年に工事した全国の平均」とは扱えません。
| 公開例 | 屋根面積 | 税込総額 | 金額を見るときに外せない条件 |
|---|---|---|---|
| 川口市:塗装+棟板金交換 | 60㎡ | 63.1万円 | 急勾配の屋根。建物足場・屋根足場、棟板金の全交換を含み、外壁同時施工の値引きも含む |
| 東京都北区:カバー工法 | 65㎡ | 106.3万円 | 断熱材一体型の金属屋根。建物足場・屋根足場、換気棟などを含む。雨どい交換は含まない |
| 東京都青梅市:瓦から金属屋根へ葺き替え | 78㎡ | 178.2万円 | 撤去・処分、野地板の増し張り、防水紙、建物足場などを含む |
この3件の差額を、そのまま「工法を変える追加料金」とは計算できません。 同じ家・同じ面積の比較ではないからです。塗装例も塗るだけの価格ではなく、板金交換を含みます。
また、延べ床面積30坪の家が、必ず屋根100㎡になるわけではありません。階数、屋根の形、勾配、軒の出で変わります。見積書では「延べ床面積」「屋根面積」「足場面積」を別々に確認してください。65㎡の事例を100㎡へ単純に比例計算しても、足場や役物の費用まで同じ比率で増えるとは限りません。
見積もりで抜けやすい8項目
| 費目 | 確認する質問 | 回答によって判断すること |
|---|---|---|
| 建物足場・飛散防止 | 足場面積はいくつか。屋根足場も必要か | 建物の外周足場と屋根上の足場を混同していないか |
| 既存材の撤去・処分 | 何をどこまで外し、処分費はいくらか | カバーでも板金等の部分撤去が別途にならないか |
| 下地 | 野地板の補修を含むか。未調査部分はどこか | 全面増し張りと部分補修の違い、追加時の上限・承認方法 |
| 防水紙 | 製品と施工範囲、既存材との関係はどうなるか | 屋根材の名称だけで工事を比較していないか |
| 屋根材・塗料 | 型番、施工数量、塗装仕様は何か | 材料代だけの単価か、施工を含む単価か |
| 棟・谷・軒先など | 板金、役物、換気棟は含まれるか | 屋根面以外の部材が見積もりから抜けていないか |
| 雨どい・周辺復旧 | 交換か脱着か。外壁との接合部も直すか | 屋根工事後に別工事が必要になるか |
| 諸経費と税 | 運搬、駐車、養生、税を含む支払額はいくらか | 比較している総額の範囲が一致するか |
例えば「解体後の野地板補修は別途」とある場合、別途という表記だけで高額業者とは判断できません。現地調査で見えなかった部分を、写真・追加見積もり・施主の承認を経て直す手順があるかを確認します。反対に「全部込み」と言われても、含まれる部材や補修範囲が不明なら書面にしてもらいましょう。
屋根材は、価格だけでなく重さ・納まり・今後の手入れで選ぶ
| 検討する材料 | 選ぶ前に確認したいこと |
|---|---|
| 金属屋根 | 断熱材の有無、製品の施工条件、雨音への対策、沿岸部などでの保証条件 |
| スレート系 | 既存材・新材の商品名、再塗装の可否、下地と勾配の適合条件 |
| 瓦 | 下地や固定方法、建物側の条件、割れた部分を交換できるか、重量が変わる場合の確認 |
「金属は必ず何年」「塗装すれば必ず10年延びる」といった年数だけで決めると、製品保証と工事保証、実際の点検時期を混同しやすくなります。希望する材料について、保証の対象、除外条件、点検や補修の必要性を確認してください。
古い屋根材は、石綿の確認も見積もりの前提
厚生労働省の案内では、改修対象の材料について石綿の事前調査が必要とされています。一定規模以上の工事に関する結果の報告と、事前調査の要否は別です。「小さな工事だから調査不要」「築20年を超えたら一律に追加○万円」とは判断しません。
図面や過去の工事記録があれば渡し、調査の方法・資格・費用・結果と、含有が確認された場合の対応を説明してもらいます。カバー工法でも、撤去や穴開けなど実際に行う作業に応じた確認が必要です。
外壁と同時に工事すれば安くなる?
外壁塗装も近い時期に必要なら、同時見積もりは有効な比較方法です。共用できる足場等がある一方、屋根用の足場や屋根固有の補修は追加になることがあります。外壁だけ・屋根だけ・同時施工の3案を、同じ仕様で出してもらうと、実際に共用できる部分が分かります。
必要のない外壁工事まで増やしてしまうと、支払額は増えます。一律20〜40万円の節約を前提にせず、時期を分けた場合の再設置費と、今行う必要性を比べてください。外壁の見積書を受け取った段階では、外壁塗装の見積もりの見方も役立ちます。
工期と、工事中の生活で聞いておくこと
同じ工法でも、面積、補修範囲、足場、搬入経路、天候で日数は変わります。上の公開例には約6〜12日の記載がありますが、別の家にそのまま当てはめないでください。作業日数と、足場が残る期間、雨天の予備日は分けて聞きます。
- 撤去する日はどこまで進め、降雨に備えてどう保護するか。
- 車や自転車の置き場所、作業車の駐車、材料の搬入場所はどうするか。
- 騒音が出る工程と時間帯、洗濯物や窓開けに制約がある日はいつか。
- 太陽光設備やアンテナがある場合、脱着・再接続の担当と費用は誰が持つか。
- 完了時に確認する写真・検査・保証書と、その後の連絡先は何か。
補助金は、工事の必要性と分けて確認する
屋根工事の総額から、根拠のない「一律の補助金」を引いて予算を決めないでください。自治体の制度があるか、工事単独で対象になるか、申請時期や施工会社の条件は何かを、所在地の公式案内で確認します。
国の省エネ支援で扱う躯体の断熱改修も、塗料に「遮熱」「断熱」という名前があるだけで対象になるとはいえません。補助を利用する予定なら、該当する制度名、対象の工事・製品、手続きの担当を契約前に書面で整理します。ここでは、ご自宅の受給額や適用可否を算定していません。
屋根リフォームのよくある質問
30坪の家なら、いくら用意すればよいですか?
延べ床の坪数だけでは決められません。まず屋根面積を測り、塗装・カバー・葺き替えのうち実施できる工法を確認します。この記事の63.1万〜178.2万円は、60〜78㎡の異なる施工例です。その幅に必ず収まるという意味ではなく、費用の内訳を聞くための参考にしてください。
雨漏りしていても塗装で直せますか?
塗装だけで解決すると決めず、浸入口と傷んだ範囲を調べます。板金等の部分修理が必要なのか、防水紙や下地まで直す必要があるのかを判断したうえで、必要なら塗装を別の目的で検討します。
安いカバー工法を選べばよいですか?
既存屋根・下地・重量・固定方法などが適することが先です。目先の撤去費だけでなく、次回の改修で何を撤去するかまで聞いてください。適さない屋根に無理に重ねる案は、金額が安くても比較対象を見直す必要があります。
保証が長い会社ほど安心ですか?
年数だけでは比較できません。材料の変色・穴あき等の保証と、施工箇所からの漏水等に関する保証は対象が異なります。免責事項、点検の条件、連絡先、再発時の調査費を確認しましょう。
見積もりを依頼するとき、何を伝えればよいですか?
築年、屋根材、過去の工事、雨漏りの有無、希望する時期と予算を、分かる範囲で伝えます。「雨漏りの修理」と「今後に備えた屋根全体の改修」を分けて提案してほしい、と頼むと比較しやすくなります。会社の選び方はリフォーム会社の比較ポイントでも説明しています。






