スケルトンリフォームは、内装や設備を広い範囲で撤去し、残す構造を生かして住まいを組み直す改修です。間取りと水回りをまとめて見直したい人に向きますが、壁も配管もすべて自由に動かせる工事ではありません。 まず「残すもの・撤去するもの・交換するもの」を図面と見積書でそろえることが大切です。
費用の一例として、近鉄不動産のマンション向けプランは、2026年5月価格で70㎡・1,463万円(税込)と案内されています。ただし、これは同社の所定仕様のプラン価格です。戸建ての外装・耐震補強を含む総額や、どのマンションでも適用できる全国相場ではありません。
この記事では、部分リフォームとの違い、条件付きの価格例、マンションと戸建てで確認すること、工期と仮住まい、建て替えとの比べ方を整理します。
スケルトンリフォームは、どこまで解体する工事?
「スケルトン」は骨組みを表す言葉です。マンションでは専有部分の内装を撤去してコンクリートの躯体に近い状態から作り直す計画、戸建てでは柱・梁・基礎などを残して改修する計画を指すことがあります。ただし、会社によって工事名の使い方は異なり、外壁や屋根まで撤去するとは限りません。

図解:マンションの断面概念図です。実際の建物・施工写真ではありません。配管の位置や接続、部材の寸法は施工仕様を示さず、撤去・交換できる範囲は図面と現地調査で確認してください。
「フルリフォーム」や「全面リフォーム」も、すべて同じ仕様という意味ではありません。内装を全室更新しても、間取りや床下の配管を残すプランはあります。工事名より、次の範囲を確認してください。
| 確認する範囲 | 具体的に聞くこと |
|---|---|
| 内装 | 床・壁・天井のどこまで撤去するか。下地は残すか |
| 間取り | 撤去する壁と残す壁はどれか。構造上動かせない部分はあるか |
| 配管・配線 | 新しくする区間と既存のまま使う区間はどこか |
| 断熱 | どの壁・床・天井を、どの仕様で改修するか |
| 水回り | 機器だけを交換するか、位置・大きさ・配管経路も変えるか |
| 外装 | 戸建ての屋根・外壁・窓は今回の見積もりに含むか |
| 構造・下地 | 調査済みの部分と解体後に確認する部分はどこか |
配管を「一新」とする場合でも、専有部分内で交換できる区間と建物全体の共用管は別です。床下を開けるなら、交換範囲の図面や工事写真を残してもらうと、次の修理時にも役立ちます。

図解:一般的な概念図です。工事の順番や、すべての住宅で交換すべき範囲を示すものではありません。残す構造・撤去する内装・交換する配管区間は、建物と計画ごとに図面で確認します。
部分リフォームとの違いを○×△で比較
下表の○は計画の主な対象、△は条件や工事範囲次第、×は通常その計画には含めない、という意味です。商品や会社の優劣を表すものではありません。
| 比較すること | 設備・内装中心の部分改修 | スケルトン改修 |
|---|---|---|
| 傷んだ設備や内装だけを直す | ○ | △:広い撤去が不要なら過大になることも |
| 複数の部屋をまたぐ間取り変更 | △ | ○:構造・規約等の制約内 |
| 床・壁内部の配管を広く更新する | △:開口する範囲による | ○:見積もりに交換区間を明記 |
| 隠れた下地の状態を確認する | △:開けた範囲のみ | ○:解体して露出した範囲 |
| 建物の共用部分を自由に変更する | × | × |
| 住みながら工事を進める | △:水回りや動線を確保できる場合 | △:全面解体なら仮住まいを前提に相談 |
キッチンの使いにくさが収納や機器の古さだけなら、交換や部分改修で解決するかもしれません。一方、家族構成が変わり、水回り・個室・収納をまとめて組み直したいなら、スケルトン案を比較する価値があります。
費用の目安は「㎡単価×面積」だけで確定しない
マンション70㎡の公式プラン例
近鉄不動産「近鉄のマンションリノベ」の2026年5月時点の価格には、次の例があります。2026年9月21日に掲載内容を確認しました。
| 同社のプラン | 掲載単価(税込) | 70㎡の掲載価格(税込) | 掲載される主な範囲の違い |
|---|---|---|---|
| スケルトンリノベ | 20.9万円/㎡ | 1,463万円 | 全面的な間取り変更、配管・配線の取り替えなど |
| オリジナルリノベ | 12.1万円/㎡ | 847万円 | 一室の間取り変更、床・建具などの更新 |
計算は20.9万円×70㎡=1,463万円、12.1万円×70㎡=847万円です。両者の616万円の差は、同じ工事を依頼する会社の価格差ではなく、掲載プランの範囲・仕様の差です。
設備の型番、対象面積の算定方法、適用できる建物、追加工事、設計・申請等の扱いは個別見積もりで確認してください。同じ70㎡でも、梁や配管経路、搬入条件、下地の状態により希望どおりに施工できるかは変わります。
戸建ては、室内だけか屋根・外壁まで含むかを分ける
戸建てでは、同じ延床面積でも「1階の室内中心」「家全体の室内」「屋根・外壁も含む改修」で予算の前提が変わります。マンションの単価をそのまま戸建て全体に掛けず、室内・外装・構造補修を分けた見積もりを取りましょう。
たとえば、TOTOリモデルの公開事例には、築40年の戸建てで1フロア70㎡を改修し、915万円(税抜)・60日という掲載例があります。2019年12月公開の過去事例で、現在の価格見積もりや戸建て全体の相場には使えません。 戸建ての事例を見るときにも、「何㎡を、何階分、外装を含めて直したか」を読むための参考です。
総予算に足し忘れやすい項目
| 費目 | 見積もりで確認すること |
|---|---|
| 解体・処分 | 撤去する範囲、廃材運搬、残置物の扱い |
| 下地・構造補修 | 調査で分かる補修、解体後に判明する部分の追加手順 |
| 設備・配管・電気 | 機器仕様、交換区間、電気容量や経路の変更 |
| 設計・調査・手続き | 図面作成、建築確認等の要否と費用 |
| 断熱・窓 | 施工部位と仕様。窓は専有・共用の区分も確認 |
| 仮設・現場条件 | 養生、搬入、エレベーター利用、駐車・資材置場 |
| 暮らしに伴う費用 | 仮住まい、引っ越し、荷物保管、家具・家電 |
予算を調整するときは、見えない配管や必要な補修を説明なしに削らず、設備のグレードや造作の範囲など、暮らしへの影響を比較しやすい項目から検討してください。
マンションで自由にできないこと
専有部分の改修でも、構造・共用部分・管理規約による制限は残ります。 間取り図だけで「この壁をなくせる」「キッチンを反対側へ移せる」と判断しないことが大切です。
- 構造上必要な壁・柱・梁:撤去できる間仕切りと躯体を、図面と現地で区別する。
- 水回りの位置:共用の排水立て管との位置関係、床の高さ、排水経路を確認する。
- 床材と音への配慮:管理規約・工事細則に指定がある場合は、採用する床の仕様を照合する。
- 窓・玄関扉・共用配管:部位の区分と変更できる範囲、必要な承認を先に確かめる。
- 工事日程と搬入:作業可能な曜日・時間、養生、申請期限、資材搬入を工程に入れる。
国土交通省のマンション標準管理規約でも、専有部分の修繕に関する申請・承認等が定められています。これは標準モデルなので、実際には自分のマンションの規約と工事細則を確認します。契約後に希望の工事が認められない事態を避けるため、施工会社のプラン確認と管理組合への相談を並行しましょう。

図解:確認の流れの概念図です。配管の寸法や施工方法を示す図ではありません。実際の工事の可否・申請・工事条件は各マンションの管理規約・工事細則と建物の状態で確認してください。
戸建ては「残す構造」の状態と手続きが重要
柱や梁を残す工事だから、構造の確認が不要になるわけではありません。雨漏り・腐朽・シロアリ被害の有無、過去の増改築、基礎や接合部などを調べ、残して使える部分と補修・補強が必要な部分を分けます。
2025年4月以降、2階建ての木造戸建て等で行う大規模な修繕・模様替えは、建築確認手続きの対象となります。主要構造部の1種類以上について過半を改修する場合などが該当し、水回り設備の交換だけと同じ扱いではありません。国土交通省の説明資料を踏まえ、建築士や施工会社に今回の計画の要否を確認してください。
既存不適格や再建築の制約がある建物も、「リフォームなら何でもできる」とは限りません。確認申請の要否とは別に、計画の適法性や安全性を確かめる必要があります。図面や確認済証・検査済証など、手元にある資料を相談時に持参しましょう。
また、解体を伴う改修では石綿の事前調査も確認します。厚生労働省の案内に沿って、調査対象、結果、必要な措置と見積もり上の扱いを説明してもらいます。
工期は着工から完成だけでなく、調査・設計・手続きも見る
相談した日から住めるまでと、現場で施工する日数は別です。前述の近鉄不動産には約81㎡・約101㎡の改修事例でそれぞれ約2.5か月という工期表示がありますが、すべての住宅に当てはまる期間ではありません。
状態を調べる
総予算を決める
搬入を整える
施工を進める
図は検討の順序を示したもので、各工程の日数を表すものではありません。仮住まいを契約する前に、解体後の確認日、設備納期、休工日、完成検査、手直しの期間も含めた工程表を受け取りましょう。
全面解体でトイレや浴室が使えない場合、住みながらの施工は難しくなります。「一部の部屋に荷物を残せるか」「そのために工事が分割されるか」「二度の引っ越しが必要か」を確認すると、工事費以外の出費も把握できます。
建て替えと迷ったら、同じ暮らしを実現する条件で比べる
築年数だけで改修か建て替えかを決める必要はありません。残す構造の状態、必要な性能、希望する面積、法的制約、予算をそろえて比較します。
| 比べる視点 | スケルトン改修で確認 | 建て替えで確認 |
|---|---|---|
| 住まいの状態 | 残す構造を補修して使えるか | 解体と地盤・基礎を含めた計画 |
| 希望の間取り | 構造・配管の制約内で実現できるか | 敷地・法規・構造の制約内で実現できるか |
| 安全・快適性 | 耐震・断熱等をどの範囲で改善するか | 目標仕様と費用 |
| 総費用 | 補修・設備・外装・仮住まい等を含む額 | 解体・新築・付帯工事・仮住まい等を含む額 |
| 将来の手入れ | 今回残す部分の次の更新時期 | 新しくなる部分と維持管理計画 |
改修費が新築費の何%なら必ず得、という固定の線引きはできません。まず必要な工事と希望を分け、同じ条件で2〜3社へ相談する方法はリフォーム会社の選び方も参考になります。
よくある質問
スケルトンにすれば、配管は全部新しくなりますか?
自動的には新しくなりません。契約した交換範囲によります。マンションの共用管、隣接部分、残す床の下などが対象外のこともあるため、交換区間と既存利用の区間を図面で確認してください。
予算を抑えるため、解体後に工事内容を決めてもよいですか?
解体後にしか分からない補修はありますが、主要設備や間取りまで未定だと、追加費用・納期の調整が大きくなります。契約前に基本範囲を決め、未確認部分は調査方法、追加見積もり、施主の承認手順を取り決めましょう。
スケルトンなら必ず断熱性能や耐震性も上がりますか?
解体すること自体で性能が上がるわけではありません。断熱や耐震の調査・設計・施工が含まれているか、どの部位をどう改善するかを確認します。特にマンションは住戸内でできることと建物全体の対応を分けて考えます。
補助金を引いた金額を予算にしてよいですか?
スケルトンという工事名だけでは対象と決まりません。対象住宅・工事・設備・申請者・契約や着工時期などを制度ごとに確認し、受給が確定していない額を先に予算から引かないでください。申請時期も一律ではないため、利用候補の公式要項を契約前に確認します。
最初の相談では何を伝えればよいですか?
住宅の種類・面積・築年・過去の改修、困り事、残したい部分、変更したい間取り、総予算、入居希望日を伝えます。「全解体したい」だけでなく、実現したい暮らしを説明すると、部分改修で足りるかを含めて提案を比較できます。



