マンションを全面的に直したいとき、専有面積が同じでも、内装と設備を替える工事と、間取り・配管まで見直す工事では費用が違います。フルリフォームという名前だけで比較せず、残す部分と直す部分をそろえることが、予算を決める第一歩です。
パナソニックのリフォームショップ紹介サービスが公表する完工物件の集計では、マンションのリフォーム費用は901万〜1,200万円の価格帯が最多でした。ただし、全国すべてのフルリフォームを集めた相場ではありません。集計対象・時期を確かめ、自宅の工事範囲に近い事例を比較するために使いましょう。
この記事では、条件付きの費用例、面積だけでは分からない追加費用、住みながら工事する場合の判断、中古購入から入居までの進め方を説明します。
マンションのフルリフォーム費用は、面積と工事範囲で読む
公表された費用データは、対象と時期を確認する
パナソニックのリフォーム費用に関する解説は、同社のリフォームショップ紹介サービスを利用した完工物件1万件をもとにしています。調査期間は2019年5月〜2025年8月で、マンションでは901万〜1,200万円が最も多く、次いで601万〜900万円、1,201万〜1,500万円と紹介されています。
この集計は、同じ専有面積・同じ設備をそろえた見積もりではありません。税の扱いを含め、契約予定の見積もりと条件が一致するとも限りません。900万円前後なら必ず全面改修できる、という予算保証には使わないでください。
より具体的な工事範囲を見る例として、住友林業ホームテックが公表するマンションのリフォーム事例があります。東京都の築22年・RC造・69㎡の事例は、間取り変更、水回り設備、給排水管の更新、造作家具を含むフルスケルトンの計画で、費用を1,900万〜2,100万円台としています。
こちらの費用表示も、2024年7月時点の同社の相場で再計算した参考価格です。実際の契約額や2026年の見積もりそのものではなく、税区分も契約前に確認が必要です。先ほどの集計より高いことを理由に割高と決めず、工事の範囲・造作・仕様の違いを読み取ります。
同じ70㎡でも、何を残すかで見積もりは変わる

工事範囲を整理する概念図です。右の配管は更新対象を考えるための模式表現で、実際の接続方法を示す施工図ではありません。
図の3つは、価格順が固定された商品プランではありません。どの範囲に手を入れるかを相談するための区分です。内装中心でも高価な設備や造作を増やせば費用が上がり、配管更新を含んでも既存の間取りを生かす案なら費用の配分が変わります。
| 工事範囲 | 主に確認するもの | 見積もりが変わる条件 |
|---|---|---|
| 内装と設備を中心に替える | 壁紙、床の仕上げ、キッチン・浴室など | 既存下地を使えるか、設備のサイズや接続が合うか |
| 間取りも変更する | 間仕切り、建具、収納、照明・コンセント配置 | 動かせる壁か、床・天井の復旧範囲、設備移動の可否 |
| 床・壁の内側や配管まで見直す | 専有部分の配管、下地、床組み、断熱等 | 解体範囲、見えない部分の状態、更新できる区間 |
50㎡・70㎡・90㎡という専有面積は予算を考える手掛かりですが、それだけで総額を決めるものではありません。キッチンや浴室は小さな住戸にも必要なため、面積が半分なら費用も半分になるとは限りません。
平米単価を計算する場合も、総額に何が含まれているかを統一しましょう。設計料、解体・処分、設備、造作、消費税を含む見積もりと、工事本体だけの価格を同じ列で比較すると判断を誤ります。
見積書は、工事の中身と別途費用を分ける
全面改修では、設備のグレードに目が向きやすくなります。しかし、解体、下地補修、配管、電気、養生、廃材処分など、仕上がると見えなくなる作業も予算に関わります。
| 見積もりの項目 | 比較する内容 | 契約前の質問 |
|---|---|---|
| 設計・調査 | プラン作成、図面、現地調査の範囲 | 設計変更は何回・どこまで含まれますか? |
| 解体・処分 | 残す部分、撤去する部分、搬出方法 | 残す床や建具まで撤去費に入っていませんか? |
| 配管・電気 | 更新区間、設備移動、回路・容量の確認 | 見積もりに含む区間を図面で示せますか? |
| 内装・建具 | 材料、面積、床の仕様、下地補修 | 下地の補修が必要な場合は別料金ですか? |
| 水回り設備 | メーカー・型番・サイズ・オプション | 写真の仕様と見積もりの仕様は同じですか? |
| 造作・収納 | 寸法、棚、扉、仕上げ、金物 | 既製品にした場合の差額と使い勝手はどう違いますか? |
| 共通費用 | 共用部養生、搬入、駐車、現場管理、清掃 | 別途扱いの作業と消費税を含めた総額はいくらですか? |
複数社へ依頼するときは、要望を同じ形で渡します。たとえば、浴室とキッチンは交換、間仕切りは1か所変更、床は全室更新、収納は既製品も比較、といった具合です。金額が違ったら値引き交渉の前に、数量と仕様が違っていないか確認することが重要です。
解体後にしか分からない劣化については、追加が出る可能性、調査できる時点、追加工事の承認方法を契約書や見積書で確認します。工事が始まってから口頭だけで変更を重ねないようにしましょう。
中古マンションは、購入前に希望の改修が可能か調べる
専有部分でも、自由に変えられるとは限らない
国土交通省はマンション標準管理規約を公開していますが、これは管理規約のひな型です。実際の工事は、購入候補のマンションの管理規約・使用細則・工事申請の手順を確認して進めます。
特に確認したいのは、次の項目です。
- 床材:使用できる床材や遮音性能の条件があるか。
- 間取り:撤去できない壁・梁・柱、設備移動の制約がないか。
- 配管:専有部分と共用部分の区分、更新できる範囲、排水経路。
- 窓・玄関扉・バルコニー等:自分で変更できる範囲と必要な手続き。
- 工事運営:作業できる曜日・時間、共用部の養生、搬入経路、届出・承認の時期。
内見で壁を見ただけでは、撤去できる壁かどうかを判断しきれません。図面や管理規約を施工会社へ共有し、現地調査で確認できたことと、解体後でないと分からないことを分けて説明してもらいます。
購入価格だけでなく、入居までの予算を先に置く
中古購入と改修を同時に考えるなら、物件代金と工事代だけで資金を使い切らないようにします。購入の諸費用、仮住まい、引越し、家具・家電なども別に整理する必要があります。
新築より必ず何割安いとはいえません。候補物件ごとに、購入費用と希望する工事、共用部や管理の状態を合わせて比べましょう。住宅ローンとリフォーム資金をまとめて考える場合も、金融機関へ融資実行の時期と支払日を確認します。施工会社への着手金などが先に必要な場合、総額が足りても支払時期が合わないことがあります。
総予算は、工事完了ではなく入居までで考える

入居までの支出を整理する概念図です。家具や仮住まいが工事見積もりに含まれていることを示すものではありません。
図の中央と右は、施工会社の見積もりから抜けやすい支出です。総予算が決まっている場合は、それらを確保した残りが工事へ使える金額になります。
たとえば、仮住まいを使う計画なら、家賃だけでなく初期費用、荷物の保管、現在の家から仮住まいへの引越し、完成後の引越しを確認します。引渡しが延びた場合に契約を延長できるか、追加料金がどうなるかも聞いておくと安心です。これは支出項目の整理例で、特定の契約や実際の施工例ではありません。
家具や家電は、残す物の寸法と搬入経路を先に測ります。完成後に冷蔵庫が入らない、手持ちの食器棚が置けないといった問題は、図面の段階で確認した方が調整しやすくなります。
予備費は一定割合なら必ず足りるものではありません。施工会社に、見積もりへ含めた補修と、未確定の補修を分けてもらい、その不確実な項目に備える金額を相談してください。
住みながらのフルリフォームは、生活機能を残せるかで判断する
全面的に床や配管を更新する工事では、仮住まいを含めて計画するのが現実的です。一方、部屋ごとに内装を替えるなど、生活する場所と工事する場所を分けられる計画なら、住みながら進められる可能性があります。
判断を分けるのは、工事の呼び名ではなくトイレ・入浴・調理・就寝の場所を、毎日確保できるかです。
| 確認すること | 住みながら進める場合の条件 | 難しいときの対応 |
|---|---|---|
| 水回り | 使用できない日・時間が明確で、代替手段がある | 仮住まい・一時的な滞在先を検討 |
| 寝室・荷物 | 工事区域と生活区域を分けられる | 荷物保管と退去期間を見積もる |
| 騒音・粉じん・臭い | 家族の在宅時間や体調に支障がないか確認できる | 日中の滞在場所も含めて計画 |
| 動線 | 玄関から生活場所への安全な通路を確保できる | 工事の分割や仮住まいへ変更 |
住みながらなら必ず安いわけではありません。部屋ごとに資材や家具を移動し、工程を分割すると手間が増えることがあります。仮住まいの費用と、工事を分割した場合の費用・日程を並べて比較しましょう。
工期は、設計・手続き・納品・工事を分けて聞く
工事期間だけが分かっても、いつ入居できるかは決まりません。特に中古購入の場合は、売主との調整や物件の引渡し、管理組合への手続き、設備の納品を含む予定が必要です。
- 購入前または初回相談:希望する工事が可能か、図面・規約・現地で確認する。
- プランと予算の調整:残す物、設備、間取り、仕様、別途費用を決める。
- 契約と手続き:工事範囲、支払、追加変更、管理上の手続きをそろえる。
- 着工準備と納品確認:仮住まい、搬出、共用部養生、必要な設備の納期を確認する。
- 解体・設備・内装工事:解体後の状態を報告してもらい、変更は書面で決める。
- 完了検査と引渡し:仕上がり、設備の動作、図面との差、残作業を確認する。
- 入居:清掃や是正工事、荷物の搬入まで含めて日を決める。
面積だけで一律に何か月と決めず、施工会社の工程表で工事の順序と余裕日を確認します。引越日を先に動かせない事情がある場合は、相談の最初に伝え、完成が間に合わない場合の対応も決めておきましょう。
施工会社は、マンションの制約を説明できるかを見る
施工写真の雰囲気が好みに合うことに加え、自宅に近い築年数・構造・工事範囲の経験があるかを確認します。実例を見せてもらうときは、費用だけでなく、残した部分と変更した部分を聞くと参考になります。
設計担当との打合せでは、きれいなパースだけで決めず、毎日の動きを説明してください。洗濯物をどこで干して収納するか、食器や掃除機をどこに置くか、家族が同時に使う場所はどこか。希望が具体的だと、予算を優先する箇所も決めやすくなります。
契約前には、見積書・図面・仕様書の内容がそろっているか、追加工事を誰が承認するか、工期変更時の扱い、商品保証と工事保証の違いを確認します。保証は年数だけでなく、対象になる不具合、連絡先、免責事項を読みましょう。
よくある質問
70㎡なら、いくら用意すればよいですか?
70㎡という面積だけでは決まりません。まず内装中心か、設備交換を含むか、間取り・配管まで変えるかを決めます。そのうえで、自宅と近い工事範囲の見積もりを取り、税、設計、仮住まい、引越しまで足した金額を予算にします。
予算が足りない場合、何から調整すればよいですか?
住まいの不具合への対応と、暮らしに必要な変更を先に残します。次に、設備のオプション、造作を既製品に置き換える案、間取りを生かす案を比較します。壁や床を閉じた後にやり直しにくい工事は、後回しにした場合の費用も聞いてください。
間取りを変えれば、キッチンや浴室も好きな場所へ移せますか?
自由に移せるとは限りません。構造、排水経路、床下や天井の空間、管理規約などの条件があります。希望する位置を伝え、可能な案と難しい理由、別案を図面で説明してもらいましょう。
DIYで節約できますか?
小物や後付けの家具などを自分で用意する案はあります。ただし、工事範囲と重なる作業は施工会社と分担を決めてください。配管・電気・防水などを費用だけで自分の作業へ移さず、管理規約と安全面も含めて確認します。
営業電話を増やさず相談できますか?
問合せ先、紹介先の数、希望する連絡方法を確認して申し込みましょう。初回相談で連絡可能な時間帯を伝え、比較を終えて依頼しない会社にはその旨を連絡します。図面などの情報も、送付先と利用目的を確認して共有してください。
補助金を含めて予算を立ててもよいですか?
受給が確定する前に、見込み額だけを差し引いて支払計画を決めないようにします。対象工事や受付状況、申請の役割分担は制度ごとに確認が必要です。補助金診断は候補を整理する入口として利用し、実際の計画との適合は公式の要件を照合してください。
工事範囲のメモを作ってから、見積もりを依頼する
残す物、必ず直す物、予算が合えば追加したい物の3つを書き出しましょう。設備の型番や床の仕様が未定でも、暮らしの困り事と予算上限、希望入居日が伝われば、比較の土台を作れます。
間取りや配管まで撤去する工事を詳しく知りたい方は、スケルトンリフォームの進め方も参考にしてください。見た目を整える工事との違いを確認してから相談すると、不要な解体と必要な更新を分けやすくなります。
国の制度の再確認(2026年9月11日)
この節に列挙した国の制度について公式資料を再確認しています。記事内の自治体制度・費用相場・製品情報等は、この確認の対象に含みません。
- 給湯省エネ2026・基本額と加算:基本額はエコキュート7万円、ハイブリッド給湯機10万円、エネファーム17万円/台です。対象の性能加算はエコキュート3万円、ハイブリッド給湯機2万円で、撤去加算にも別の条件があります。
- 住宅省エネ2026キャンペーン:国のリフォーム補助は登録事業者が手続きを行います。予約の期限は遅くとも2026年11月16日、交付申請は遅くとも12月31日で、予算到達時は早まります。契約だけで予算枠を確保したことにはなりません。
対象型番、受付状況、個別の工事要件によって受給可否・金額は変わります。






