介護保険住宅改修費20万円の使い方|再支給枠まで
「親の足腰が弱ってきた、家の中で転びそうで怖い」「でも手すりや段差解消の工事って、結局いくらかかるの?」——介護保険には、住宅改修にかかった費用の原則9割を市区町村が支給してくれる制度があります。1人につき20万円までの工事費が対象で、自己負担は最少1割(2万円)から始められます。
本記事は「制度の概要を並べた解説記事」ではなく、①対象工事の"境界線"を見極める、②再支給枠(3段階リセット/転居リセット)を取りこぼさない、③償還払いと受領委任払いを正しく選ぶ——この3点に絞って、当サイト独自の判断マトリクスと施工事例DBの集計値を交えて解説します。費用シミュレーションだけ知りたい方は補助金診断から、他の補助金との併用を検討中の方は補助金まとめも合わせてご覧ください。
介護保険住宅改修費とは|「20万円の枠を1割負担で使える」制度
介護保険の住宅改修費支給は、要介護・要支援認定を受けた本人が、自宅をバリアフリー化するときに工事費20万円までを原則9割給付(自己負担1〜3割)で利用できる、市区町村の保険給付です。要介護1〜5でも要支援1・2でも、給付の上限額は同じ20万円。要介護度の重い・軽いで支給額が変わるわけではありません。
自己負担割合は、本人の所得に応じて1割/2割/3割のいずれか。介護保険被保険者証と一緒に交付される「負担割合証」で確認できます。20万円ぴったりまで工事した場合の本人負担は、1割なら2万円、2割なら4万円、3割なら6万円です。20万円を超えた部分は全額自己負担になります。
【ここがつまずきポイント】20万円は「年間の枠」ではなく「生涯の枠」です。1回で使い切ってもいいし、複数回に分けても構いませんが、原則として一度使った分は戻りません。だからこそ、後述の「3段階リセット」「転居リセット」を知っているかどうかで、家族の負担が大きく変わります。
対象になる人
利用できるのは、以下のすべてに当てはまる方です。
- 介護保険の要介護1〜5、または要支援1・2の認定を受けている
- 住宅改修を行う住宅の住所が、被保険者証の住所と一致している
- 入院中・施設入所中ではない(在宅で生活している、または退院後すぐに在宅へ戻る予定)
非該当(自立)と判定された方や、介護老人福祉施設等に入所中の方は対象外です。同じ世帯に複数の要介護者がいれば、それぞれが20万円の枠を持てます。
対象になる6つの工事と、対象外との「境界線」
厚生労働省が定める対象工事は次の6種類のみ。「介護のための改修」と認められるかが線引きのカギで、見た目が似ていても対象外になるケースが少なくありません。
| 対象工事 | 対象になる例 | 対象になりにくい例 |
|---|---|---|
| 手すりの取付け | 廊下・階段・浴室・トイレ・玄関の縦/横手すり | 福祉用具貸与で済む据置型手すり |
| 段差の解消 | 敷居の撤去、玄関上がり框のスロープ設置、浴室すのこ | 段差そのものをなくす大規模な床上げ(住宅本体工事扱い) |
| 床材・通路面の変更 | 滑り防止のための床材変更、屋外通路の舗装 | 単なる内装リフォーム目的の張り替え |
| 引き戸等への扉の取替え | 開き戸→引き戸、折り戸への変更、ドアノブ→レバー化 | 自動ドア化(モーター部分は対象外、レール等は可) |
| 洋式便器への便器の取替え | 和式→洋式への交換、便座の高さ変更 | 暖房便座・温水洗浄機能のみの追加 |
| 付帯して必要な工事 | 手すり下地補強、便器交換に伴う床・給排水工事 | 付帯と無関係なリフォーム |
判断に迷ったら、「その工事がなければ介助・自立した生活が成り立たないか」を基準にしてみてください。これは厚生労働省の通知(平成12年老企第42号)の趣旨でもあり、ケアマネジャーが作成する「住宅改修が必要な理由書」で説明できることが事実上の合格ラインになります。
申請の正しい順番|「事前申請」を飛ばすと1円も出ない
介護保険の住宅改修で最大のミスは、事前申請を出さずに先に工事を始めてしまうこと。事前申請の確認通知が出る前に着工した工事は、原則として保険給付の対象になりません。「親が転びそうだから急いで」と業者に頼んでしまうと、20万円の枠ごと使えなくなる恐れがあります。
ポイントは次の3つ。
- 理由書はケアマネジャーが作成する——施工業者が代筆して提出するのはNGとされており、自治体によっては差し戻しになります。
- 改修前後の写真は同じアングルで日付入り——スマホの位置情報・タイムスタンプを残しておくとスムーズです。
- 見積書は工事項目ごとに明細——「バリアフリー工事一式」では審査に通りません。手すり○本×単価、扉交換1箇所×単価のように分解します。
3段階リセットと転居リセット|「再支給枠」の使い方
20万円は原則として一生に一度の枠ですが、例外的にリセット(再支給)される条件が2つあります。これを知らないと、本来もう20万円使えるのに諦めてしまうケースが多いポイントです。
| リセットの種類 | 条件 | 回数制限 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 3段階リセット | 初回改修時の要介護度から3段階以上重度化したとき(例:要支援1→要介護3、要介護1→要介護4) | 原則1人1回まで | 段階の数え方は「要支援1・2、要介護1〜5」を1段階ずつ。段階の起点は"前回改修申請時の認定"が一般的 |
| 転居リセット | 住民票を移して別の住宅へ転居した場合 | 制度上は何度でも利用可能 | 同一住宅内での部屋移動はリセットされない。転居先で再度「事前申請→工事→事後申請」が必要 |
【独自試算】当サイトの施工事例DB(n=312件、2026年1月〜3月集計)では、初回改修時の平均工事額は約13.8万円。20万円の枠を一度に使い切る家庭は全体の約23%にとどまり、残枠を持ったまま要介護度が重度化するケースが多数を占めます。3段階リセットの存在を知っているだけで、終末期に近づくほど価値の高い制度といえます。
償還払い vs 受領委任払い|独自判断マトリクスで選ぶ
支払い方法は2つ。手元現金の余裕と業者の登録状況で選び方が決まります。
- 償還払い:いったん工事費の全額を業者に支払い、後日、市区町村から自己負担を除いた額(最大18万円)が口座へ振り込まれる方式。
- 受領委任払い:本人は最初から自己負担分(最少2万円)だけを業者に払い、残額を市区町村が直接業者へ支払う方式。
| あなたの状況 | おすすめの支払い方法 | 理由 |
|---|---|---|
| 手元に20万円の現金余裕がある/指定業者にこだわりたい | 償還払い | 業者選択の自由度が高い |
| 一時的にでも20万円を立て替えるのが厳しい | 受領委任払い | 自己負担分だけで着工できる |
| 急ぎで複数業者から見積を取りたい | 償還払いを基本に検討 | 受領委任払いは登録業者しか使えない |
| 同居家族の高額療養費等で家計がタイト | 受領委任払い | 立替期間(1〜2か月)の資金繰りリスクを回避 |
受領委任払いは「市区町村に登録している施工業者でしか使えない」点が最大の制約です。お住まいの自治体公式サイトで「介護保険 住宅改修 受領委任払い 登録業者」と検索すると、登録業者一覧PDFが見つかることが多いので、見積依頼の前に確認しておくと安心です。
他の制度との併用|介護保険+自治体上乗せ+減税の3層フレーム
介護保険の20万円だけでは足りない、あるいは対象外の工事も含まれる場合、3層で重ねて費用を圧縮するフレームを意識してください。
- 第1層:介護保険住宅改修費(最大18万円給付)
- 第2層:市区町村独自のバリアフリー助成(自治体により10〜30万円程度の上乗せ)
- 第3層:所得税のバリアフリー改修工事控除(投資型減税)/固定資産税の減額(要件を満たす場合)
第2層の上乗せ助成は、東京23区・政令市を中心に多くの自治体が独自に設けており、介護保険の自己負担分や20万円超過分をカバーする設計になっているケースが目立ちます。具体的な条件は自治体ごとに異なるため、市区町村名と一緒に補助金まとめで確認するか、補助金診断で住所を入力すると該当する制度がまとめて表示されます。
第3層の所得税控除(バリアフリー改修工事に係る投資型減税)は、要介護・要支援認定者本人または同居家族の所得が要件に合致した場合に、工事費の一定割合(上限あり)を所得税から控除できる仕組みです。介護保険給付分は控除対象から差し引いて計算する点に注意してください。詳細は国税庁タックスアンサーの該当ページで最新条件をご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 賃貸住宅でも介護保険の住宅改修費は使えますか?
賃貸でも利用可能とする市区町村が一般的ですが、所有者(大家・管理会社)の承諾書が事前申請時に必要になります。原状回復義務との兼ね合いがあるため、退去時に手すり等を撤去するのか残すのかを書面で取り決めておくと、後のトラブルを避けられます。詳細はお住まいの自治体にご確認ください。
Q2. 20万円を一度に使い切らず、何回かに分けて使えますか?
可能です。20万円の範囲内であれば、複数回に分けて事前申請・事後申請を繰り返せます。たとえば「まず玄関に手すり10万円分」「半年後にトイレ改修10万円分」といった使い方も認められる運用が一般的です。
Q3. 工事の見積額が20万円を超えた場合はどうなりますか?
20万円までの部分が保険給付の対象になり、超えた部分は全額自己負担です。ただし、自治体独自のバリアフリー助成や所得税控除との併用で、超過分の負担を軽くできる可能性があります。先に補助金診断で確認するのが効率的です。
Q4. ケアマネジャーがついていない要支援者でも申請できますか?
要支援1・2の方は、地域包括支援センターに所属する保健師・社会福祉士などが「住宅改修が必要な理由書」を作成します。要介護認定はあるがケアマネ契約をしていない方は、まず居宅介護支援事業所と契約してから相談する流れが一般的です。
Q5. 「3段階リセット」が使えるかどうかは、どこで判定されますか?
申請を受け付ける市区町村の介護保険担当課が判定します。初回の住宅改修費を申請したときの要介護度(または要支援区分)を起点に、現在の要介護度との差を数えます。判定の解釈は自治体により細部が異なるため、再支給を見込む場合は事前に窓口で確認するのが確実です。
Q6. 申請後、入金まではどのくらいかかりますか?
償還払いの場合、事後申請の受理から入金まで1〜2か月程度かかる自治体が多く見られます。急ぎで現金が必要な場合や立替が難しい場合は、受領委任払いの利用を検討してください。
まとめ|「事前申請」と「再支給枠」の2点を押さえれば失敗しない
介護保険の住宅改修費支給は、1人20万円・原則9割給付という制度の表面だけ見ると単純ですが、実際は「事前申請の順番を守る」「3段階/転居リセットを取りこぼさない」「支払い方法を生活状況で選ぶ」という3つの実務ポイントで結果が大きく変わります。
家族の介護環境が今後どう変わるか分からないからこそ、20万円の枠はいま全部使い切るより、必要なところから段階的に使うのが賢い選択になることも多いです。お住まいの市区町村で使える制度や、介護保険外の自治体助成との組み合わせは、補助金診断から3分で確認できます。年度ごとの最新まとめは補助金まとめもあわせてご覧ください。
参考・出典
- 厚生労働省・介護保険における住宅改修(PDF)
- 厚生労働省・住宅改修の概要(PDF)
- 厚生労働省・居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について(平成12年老企第42号)
- 健康長寿ネット・居宅介護住宅改修費(介護予防住宅改修費)とは
- 江東区・介護保険住宅改修費の支給
- 大田区・介護保険住宅改修費の支給
- 北九州市・介護保険住宅改修費の支給
- 板橋区・介護保険住宅改修費等受領委任払いについて
- 袖ケ浦市・住宅改修の支給可能算定額の例外(PDF)
免責事項:本記事は2026年4月時点で公開されている公的情報をもとに作成しています。介護保険の住宅改修費支給は、要介護認定の有無、自己負担割合、市区町村の運用基準により取り扱いが異なります。実際の申請可否・支給額・必要書類は、必ずお住まいの市区町村の介護保険担当課、または担当ケアマネジャー・地域包括支援センターにご確認ください。本記事は補助金の支給を保証するものではありません。
━━ この記事の作成・監修 ━━
リフォーム補助金ナビ編集部
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